企業法務の作法
著作者人格権の譲渡の禁止?
著作者としての権利は、著作権と呼ばれる一連の経済的な権利と著作者人格権と呼ばれる人格的権利とから構成されている。そして前者には複製権・放送権、翻案権といったものが含まれます。そして、後者には他人に勝手に作品をいじることを許さない同一性保持権といったものが含まれています。この点、著作者人格権は、名誉、自尊心という人格的な利益に関係するものであって、従って、他人に譲渡することはできません。譲渡することを合意したとしてもそれは無効と著作権法59条です。
しかし、たとえば会社の従業員が会社の業務の一環として作成した記事や文章まで個人の了解をとらないと記事の添削や編集もできないとするのは妥当ではありません。そこで、職務著作権については、従業員個人ではなく、使用者たる会社の方がそもそもの著作権者として扱われることになります。特許法とはかなり趣の異なる条文を著作権法15条にあります。これで従業員から人格権という煩雑さから解放されることになります。
しかし、著作権法15条があるからといって、雇用関係、指揮監督関係にない独立の業者に著作物の作成を委託した場合はどうなるのでしょうか。ここについては、開発成果物について開発委託契約を締結しているかがポイントになります。
契約書においても著作者人格権は買い取りを否定し除外しているケースもあるようです。この点、権利移転の契約書をきちんと交わしておくことが重要です。