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困難に遭えば、過去のカルマが消える。

人生では心配事や失敗など、心を煩わせるような出来事がしばしばおこるものなのです。しかし、覆水盆に返らずというように、一度起きてしまった時間を巻き戻すことはできないので、その失敗をいつまでも悔やみ思い悩んでいても意味はない。そのようなことがよく理解していたとしても、なお、あのときああしていればなどと感性的な悩みを重ね続けて、心の病を引き起こし、ひいては、肉体の病につながり、人生を不幸なものにしてしまうものです。感性的な悩みをしていて心労を重ねることは絶対に避けるべきことです。

 

起きてしまったことは仕方がないのです。自分が、過ちを犯したと気づいたのであれば、いたずらに悩まず、今度は失敗しないようにと、改めて新しい思うを胸に抱き、新しい行動に移っていくことが大事です。済んでしまったことに対して、深い反省はしても、感情や感性のレベルで心労を重ねてはなりません。理性で物事を考え、新たな思いと行動に直ちに移るべきなのです。それが人生を素晴らしいものとします。

 

この点については、稲盛和夫「考え方」163ページでは、人工膝関節の依頼があり、厚生省の認可を得ていないことから膝関節を供給することは薬事法違反になったことを指摘しています。

 

「認可をとっていない人工膝関節を弱みにつけこんで売っている。あくどく儲けている」

 

稲盛氏は、連日によるに新聞、雑誌に載るのですから耐えきれないと感じたそうです。

 

ところが、円福寺の西方老師を訪ねると、「それは稲盛さん、生きている証拠です」といわれたというのです。

つまり、「生きているから、そういう困難に遭遇するのです。死んでしまったら、そんな困難にも遭遇しません。生きている証拠ですよ」と話されるのです。

 

西方老師の考え方を詰めると、過去に自分が積んできた業が、今、結果となって出てきたものです。たしかに災難に遭って大変かもしれません。しかし、業が消えたのですから考えようによってはうれしいことではないか、命がなくなるようなことであれば困るが、新聞雑誌に悪く書かれた程度で済むなら、嬉しいことではありませんか。むしろお祝いすべきです」というような心の持ちようをなされるのです。

 

逆境だと思っても前世や少し前にできた悪いつきものがとれたと考えればよいのです。

 

いつまでも、くよくよと悩むのではなく、深く反省して未来を見つめ、新しい一歩を力強く踏み出すことが大切です。

 

そうすることでこそ、現在の困難を無駄にすることなく、将来に向かう糧にすることができるのです。

 

服部弁護士(愛知県弁護士会)