不動産訴訟

賃料をめぐる争い―不動産鑑定書をとりますか

賃料をめぐる争い―不動産鑑定書をとりますか。

 

服部弁護士:どうしたんですか、悠聖さん

春原弁護士:一棟借りをしているのですが、賃料をここまで値上げすることは認められるのでしょうか、という相談なのですが。

服部弁護士:ああ、前にもやったことがありますね。要するにオーナーから賃料の増額請求を受けたということですね。

春原弁護士:オーナー側と当方では、主張に大きな隔たりがあります。

服部弁護士:そうであれば、調停、訴訟に至るということが考えられますね。この手の問題は、比較的賃料は客観的なベースラインがあるので、無理や屁理屈は通りづらいということも考えておくべきでしょう。不動産鑑定士に鑑定依頼をすることになりますが、それも費用が高いですからね。そういうことも総合的な判断になりますね。

春原弁護士:鑑定の結果は現状の賃料よりは若干高い金額でしたが、賃料は据え置かれるべきと主張します。

春原弁護士:オーナーの側から調停がおきました。

服部弁護士:オーナーさんは、請求額から一切妥協しないという形のようですね。また、オーナーからすれば、新規賃料と継続賃料があるのですから、広告チラシをベースに考えると、鑑定士の鑑定結果すら安く見えるものなんですね。

春原弁護士:訴訟になってしまいましたが、鑑定書を出し、これまでの経過を主張し、賃料を据え置かれるべきだと主張しました。

服部弁護士:一般論ですが、一棟建物を貸しているケースでは親族関係や相続関係があることもありますので、問題をより複雑にさせますね。

また、不動産鑑定評価書は、賃料の増減額の一つの要素になりますので、内容の吟味も必要で数字だけ出れば良いというものではありません。内容も十分に吟味する必要がありますし、あまり、中立を気取っている不動産鑑定士は、数十万もとって何の立証に役立たないものを作成してもらっても債務不履行です。ですから、エレメントの指摘や説明など訴訟に耐えうるような内容で、依頼する場合には、案の段階で一度見せてもらうようにお願いして、断られるようでしたら、別の不動産鑑定士に交代させた方が良いと思います。依頼者が既に不動産鑑定評価書を取得している場合でも、金額での有効性だけ、を判断することなく、説明の合理性も検証するようにしましょう。そして、納得してから提出することが大切です。

不動産鑑定士の友人に聞くと、公共事業が多く単発の事件に頼る必要性があまりなく、人数も増えないので、殿様商売が多いと聞きます。

月額数万円の賃料ごときで、50万円から100万円近い鑑定費用を捻出させる経済的合理性も考える必要性があります。